株式会社CDIソリューションズはブランドを刷新し、
7月3日より「アクティベーションストラテジー株式会社」へ
社名変更しました。新サイトはこちら。

Knowledge and Columns

ナレッジ・コラム

BPRソリューション

2020/04/08

組織・制度設計の考え方 第2回:制度設計

業務改革プロジェクトにおける組織・制度設計の考え方について、第1回では組織改革の要諦について解説しました。第2回(今回)では、組織改革における制度設計の進め方についてご説明します。



【組織の構成要素】

企業の形態を問わず、組織は一般的に(1)責任権限、(2)経営資源、(3)評価・報酬の3つを構成要素とします。


(1)
責任権限

自身の属する組織が「何者か」という命題に対する明確な解を定めることによって、はじめて組織は命を吹き込まれます。組織のミッションおよび責任者を明確にするだけでなく、ミッションを実行するための権限を従業員のポジション・等級に応じて明確に定め付与していきます。

(2)経営資源

組織を機能させるには、組織のミッションを実行するに足る人的資源が不可欠なのは勿論のこと、各種組織活動の遂行を支援するための設備および予算と、加えて業務効率化・各種意思決定のために必要な情報リソース(IT)が必要です。すなわち、ヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源が一通り整っている必要があります。

(3)評価・報酬

従業員に対する動機付けを行う上で、業績評価および報酬は極めて重要です。なぜなら、従業員の努力が業績向上につながり、それが正しく評価され自身の価値たる報酬に反映されると、それによってさらにモチベーションの上がった従業員がより高いパフォーマンスを発揮していく…というスパイラルが生まれるからです。そのためには、従業員の追求すべき目標をしっかり定めた上で、能力開発を絶えず行っていく必要があります。もし従業員の目標が不明確な場合、従業員は自身が業績向上に貢献できているか自信を持てないでしょうし、目標が定まっていたとしてもそれに対する評価基準が曖昧であれば、従業員は満足のいく報酬が得られないと感じ、パフォーマンスを低下させていくことでしょう。

 

組織改革における制度設計は、通常、主に(3)評価・報酬に関する制度設計を対象とします。以下、制度設計を進める際のステップおよび考慮点について説明します。


【制度設計の主なステップ】

制度設計を行うに際しては、大きく「方針策定」「概要設計」「詳細設計」「本番移行/稼働」の4段階を踏みます。


まず第1段階の「方針策定」では、企業が置かれている環境および人事組織/制度上の問題点について、確認を行っていきます。一般的に、人事部門に社内の問題点が一通り集約されているということは少なく、その場合には改めて社内各部門へのヒアリング・確認を行った上で、客観的に問題点を抽出するとともに制度設計の方向性を定めていくことが重要です。

次の第2段階「概要設計」では、制度設計の骨格を組み上げていきます。いきなり評価基準等の検討を行うのではなく、まずは組織がいかなるミッションを負い、どのような業務を遂行していくかを予め明確にしておくことが大切です。それらを初めに定義することで、組織に求められる人材要件が浮かび上がり、人材要件の充足度合いに応じた評価基準を作成することができるのです。業務改革とセットで制度設計を行う場合には、このタイミングで業務記述書と並行して業務フローを作成することとなります。

続いて第3段階の「詳細設計」では、具体的な評価基準や昇給・昇進基準などを定め、それらを賃金テーブルおよび各種規程等に落とし込んでいきます。併せて、人材育成の観点から、教育体系やキャリアパスの見直し等を行うとともに、人材開発と職位・等級/人事評価との関連付けを行うこととなります。また前段階と同様、業務改革と並行して実施する場合には、具体的な意思決定ルール・プロセス(権限、会議体等)や会計ルール(責任会計に基づく管理会計)に関する詳細な検討を行う必要がありますし、この場合には組織再編を伴うことが通常ですので、並行して固有名詞ベースでの人材配置(スタッフィング)に着手することが必須です。

最終段階の「本番移行/稼働」では、新たな制度に基づく準備および定着化を行っていきます。具体的には、本番稼働準備として数か月の移行期間を設け、主要な制度変更について社内に周知徹底させていきます。社内報による開示だけでなく、その目的・狙いについてトップマネジメントからメッセージを発することが非常に有効です。また、このタイミングで新制度の狙いや運営上の留意点に関する社内研修を行うことが望ましいと言えます。特に現行制度との乖離が大きい場合や、現行制度と比較して一部の従業員に不利益が想定される場合には、予想される混乱・トラブルおよびその対処法について、トレーナー(講師)とトレーニー(受講者)とが双方向でコミュニケーションを取りながら、制度趣旨や解決策等について理解醸成を深める必要があるでしょう。そして本番運用に入ってからは、新制度が当初の目的に則って正しく運用されているかを注意深くモニタリングしていきます。一般的に、「大幅な変化は好まれない」という傾向があるため、各部署から不平・不満が生じることもあるでしょうし、新制度の導入当初は業務効率が低下することも想定されます。しかし、だからといって制度をすぐに元に戻すのは得策ではありません。あくまで当初の狙い通りの運営ができているか否かの観点から運用状況をモニタリングし、必要に応じて微修正していく取り組みを推進します。


【最後に】

日本企業において、従来“三種の神器”と呼ばれた「企業別組合/終身雇用/年功序列」は、既にその大きな意義を失いました。加えて、IT/ロボティクスの進化に伴い、従業員の提供すべき価値の中でも単純労働の重要性が徐々に低下しつつある中、労働者は個々人が企業と対等な関係に立ちながら、自己責任で職業を選択し職務を果たすようになってきています。こうした時流に対し、企業は労働者の多様性を受け入れ、組織と従業員をマッチングさせていきながら、必要な従業員を確保・維持していかなければなりません。労務人事面での環境変化に即さない旧態依然とした硬直的な人事制度では、企業と従業員との間の絆を有名無実なものとするばかりか、やる気・能力の高い従業員の流出を招く原因となりかねないのです。多くの企業は組織変更を頻繁に行いますが、形ばかりの「組織いじり」に終始するのではなく、今回ご紹介したような制度設計を行いながら、本当の意味での「組織づくり」を進めていただきたいと考えております。




CDI
ソリューションズ ディレクター
永松 正大 (ながまつ まさおお)

関連情報