株式会社CDIソリューションズはブランドを刷新し、
7月3日より「アクティベーションストラテジー株式会社」へ
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Project Story No.02

プロジェクト
ストーリー

Story
No.02

業務と人事と体制の一体改革は
情と理が成功の鍵

シニアディレクター 森田 克己が語る

地域の名門企業が創業以来の
赤字に転落

Y社は、伝統的な地場産業を主軸とする製造業。その主力事業であるA事業は、競合も少なく市場環境も落ち着いており、創業以来数十年にわたり安定した収益を上げていた。それ以外にも、新たにB事業とC事業という2つの新規事業を立ち上げ、それぞれ独自の強みを持った製品開発によって、業界内では一定の地位を占めるほどの成長を遂げていた。

だが、近年になってから、競争環境に大きな変化が生じていた。B事業に複数の大手競合が参入してきたのだ。競合社は、大きな資本を背景にした設備投資によってコスト引き下げをはかり、Y社よりも大幅に低い原価を実現したり、売り込みに当たっての積極的な施策を行ったりするなど、激しい攻勢を掛けてきたのだ。またC事業においても、大手事業者が参入。彼らは新規事業の成長と市場確保のために、利益を度外視した戦略を採ってきた。

Y社は従来、B事業においては高品質を売りにしていたため高コスト傾向にあり、価格競争によって非常に厳しい状況に置かれてしまった。また、C事業では商品の独自性によって一定の市場を確保していたが、そこも後発によって大きく揺さぶられることとなった。これまで長らく安定的な収益を上げていた3本の主力事業であったが、そのうち2つの状況が大きく変わり、Y社は創業以来、初めて赤字に転落、そして2年連続で計上するほど事態は悪化の一途をたどっていた。

そこで、以前に一度、別の依頼を通してつながりがあったY社の常務から、CDIソリューションズ(CDI-S)に赤字脱却のための中長期プランを策定するプロジェクトの依頼があり、担当ディレクター以下6名のメンバーで臨むことになった。

3カ月で
打ち出した
再建策と
見えてきた
真の問題点

プロジェクトの開始から最初3カ月は、課題の洗い出しをおこなった。3つの主力事業のうちA事業は黒字だが、B事業とC事業がその利益を飲み込んでしまっていたのは、誰の目にも明かだった。では、この二つの事業が市場において再び競争力を持つために、何をすべきなのか。そのゴールを見出すことが、この3カ月に求められた。

B事業については、商品の原価引き下げ手段として何が有効かを探ることから始まった。まず考えられたのは、製造工程を人海戦術から機械化することによる生産性の向上だ。だが、資本力のある大手競合事業者には到底及ばないため、設備投資でのコスト引き下げには限界があり導入は見送られた。もうひとつ、原材料費を圧縮するという施策が考えられた。B事業の製品は競合他社よりも品質重視で、コストを度外視していた側面がなきにしもあらずであったのだが、売価に対する品質・コストのバランスを見直すことで、原価を引き下げるという施策が検討された。

一方C事業は、新規参入した競合による価格攻勢が熾烈で、もはやダンピングと言えるほどのものであった。付け焼き刃の施策では太刀打ちできず、もはや打つ手なし。事業撤退が最善手なのは明かだった。

しかし、CDI-Sのメンバーの試算では、もしこれらの施策を実行したとしても、収支はわずかに黒字になる程度にすぎなかった。それでは今後さらなる競争環境の変化によって、すぐにでもまた赤字に転落する恐れが高い。より抜本的な対策が必要だった。

見えてきた裏の課題である
ガバナンス崩壊

当時、主力のA事業は3つの工場で生産を行っていた。しかし、生産拠点が分散しているために、黒字を安定して維持しているものの収益を圧迫していた。そこで分析を重ねていくと、もっとも設備の老朽化が進んでいる工場を閉鎖し、他の2工場に集約すれば収益性の改善が見込めることが分かった。また、閉鎖する工場の熟練した技術を持つ従業員をB事業の工場へ配置転換することで、機械化では実現できなかったB事業の生産性向上も可能となる。この施策によって、A事業は工場数が減るにもかかわらず収益力がアップし、B事業の生産性も向上して全社の収益をより大きくすることができるのだ。

さらに担当ディレクターは、全社的な業務の進め方にもメスを入れる必要があると判断した。情報システムを導入し、営業現場の情報が翌日には製造現場に共有され、それに基づいて生産する体制を整えるのだ。会議体も整備し、販売施策の立案と実施を現場サイドで決裁できるような稟議ルールを整える一方で、その稟議を通した営業サイドが責任を取る仕組みも必要だった。

それらが実現すれば、製造現場は販売状況を可能な限り素早く把握し、そのうえで現実的な生産計画を実施することができる。必要な情報が常に全社で共有されるため、それぞれの現場は状況を正しく把握でき、現場の判断で、それぞれの責任の下にアクションを起こせる。すなわち現代の企業経営において、まっとうとも言える業務改革を成し遂げることこそが、もっとも有効だとCDI-Sは考えたのだ。

だが、ここまでの課題洗い出しのなかで、CDI-Sの担当ディレクターにはY社のもうひとつの課題が見えてきた。それは、ガバナンスの崩壊だ。Y社は地場産業ということもあり、代々、創業家が社長についてきた。しかし、赤字に転落したこの時期、地元出身ながら創業家の人間ではない副社長が実権を握っており、ほとんどの経営的な意志決定はこの副社長が実質的に行っていて、営業施策から製品企画にいたるまで、副社長への相談なしにはすべてが回らない状況だった。その一方で副社長は、創業家の一族ではないという立場上、地元でのY社の評判に係わるような大きな意志決定ができずにいたのだ。

そうした状況では、現場に責任を分散するというCDI-Sの施策が確実に実施されるかどうか不確定であった。そこで、担当ディレクターは創業家出身の社長に直談判し、社長は副社長とともに退任を決意。新社長には今回のプロジェクトのリーダーを務めていた常務が就任し、その他の管理職等も大幅に刷新する人事策を実施した。

新体制と再建策成功の鍵は
従業員の意識

この後、Y社は新体制に移行。そして、CDI-Sが作成したプランを実行することとなった。まずは、新たな業務プロセスを導入すると同時に、その定着を図るためにすべての社員への説明と説得を行った。それには、新社長がCDI-Sの担当ディレクターとともに各拠点へ出向き、自らの口で語った。

社長は、所信表明と同時に今回のプロジェクトに対する決意と意欲について熱く語り、従業員も熱心に耳を傾けていた。数か月かけて説明をするなかで、ある拠点において担当ディレクターが、社長の話を補足する機会があった。そこでディレクターは、再建プランの実行にあたり論理整合性を持って説得するだけではなく、厳しい現状を決して悲観的には捉えず、Y社従業員がどのように努力すればそこから脱せられるのか、情熱をもって語りかけた。すると従業員から大きな拍手が湧き、その後の再建プランの実行において大きな後押しとなった。

この翌年、Y社は大幅に収益を回復し、再び黒字を計上した。市場と競争環境の分析、および社内の課題の調査から論理的に導き出された再建施策を実行すれば、この結果は通常見込めるものである。だが、それを阻害する要因は事業体そのものにあった。確実にプランを実行しうる体制と人事の決断、そしてガバナンスの再構築なくしては、再建プランの実行は危うかった。そして、それを実施する「人」の見極めが、こうした業務改革においては重要であることを示している。

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