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ナレッジ・コラム

制度・組織体制

BPRソリューション

2019/10/28

組織・制度設計の考え方 第1回:組織改革

今回のコラムでは、業務改革プロジェクトにおける組織・制度設計の考え方について、2回にわたって説明していきます。まず第1回では、組織改革をどのような考えに基づいて進めていけばよいかについて解説します。




【組織と戦略との関係】

組織のあり方を議論するうえで、「組織は戦略に従う」のか「戦略は組織に従う」のかという問題は、常に避けて通ることができない命題です。

「組織は戦略に従う」とは、アルフレッド・デュポン・チャンドラーが1962年に、著書"Strategy and Structure" にてデュポンやGMなど米国の成長企業のケーススタディを通じて提唱したものです。しばしばサッカーやラグビーといった戦略的・組織的に戦うスポーツにおける「攻め・守り」のフォーメーションを例に説明されますが、先行すべきは環境の変化に対応した最適な戦略の策定であり、組織はそれを実行するための手段として存在する…という考え方です。

一方「戦略は組織に従う」とは、イゴール・アンゾフが1979年に、著書 "Strategic Management" にて提唱したもので、ビジネス環境の変化が起こるとそれに伴い組織が新しい能力を身に付け、結果として新たな戦略が生まれることを意味します。ITの進化に伴って組織能力が高まり、その結果としてその仕組みを用いた戦略が生まれる姿をイメージすると分かり易いでしょう。

一見相反することを言っているように見える両説ですが、現在では「どちらも正しい」とされることが通説のようです。すなわち、企業/業界の置かれている環境の流動性・ステージに応じてどちらか一方が妥当する、ということです。ただし、この「戦略」とは企業レベルの企業戦略ないし事業戦略を意味するのであって、販売・購買・生産・経営企画といった、バリューチェーン単位の各機能戦略を意味するのではないことに留意する必要があります。

では、組織と機能戦略との関係性においては、「組織は戦略に従う」のでしょうか、それとも「戦略は組織に従う」のでしょうか。弊社が多く手掛けてきた業務改革プロジェクトの経験を踏まえると、原則的には「組織は戦略に従う」アプローチを採用すべきと考えます。戦略(≒業務改革の実行方針・施策)は現状の組織形態に関係なく「あるべき姿」から立案されることが通常であり、そこに現行組織や人員の枠を当てはめてしまうと、業務改革実行の推進が鈍るためです。

実際のコンサルティング現場においても、業務改革の施策を議論すると「そんなことは今の組織・人員では不可能だ」という意見が、特にミドルマネジメント層以下のメンバーから度々聞こえてきます。そのような場合には、まず組織とは「与えられるもの」ではなく「作っていくもの」という意識を持ち、ゼロベースで組織のあり方について議論していく必要があります。業務推進体制についても現行の人員数をベースとするのではなく、まず「あるべき姿」の各業務を遂行するのに要する工数(時間)を勘定し、そこからそれぞれに必要な人員数を算定して、要員計画に織り込んでいくことが重要なのです。

ただし、業務改革推進に際して、時に「戦略は組織に従う」ことを要求する場合があります。その場合の「組織」とは、「組織形態」ではなく「組織風土」「組織文化」を指します。業務改革には一定の意識改革を伴うことが最早必然であるものの、業務改革を絵に描いた餅にしないためにも、ある程度「組織風土に馴染む施策」を選択すべき場合があるのです。

某商社A社では、組織の中でも特に売上に直接貢献する営業部門が重要視される傾向にありました。このように、営業が花形視される傾向の強い企業ほど営業に対する統制が機能しにくくなり、A社でも営業部門と内勤部門との業務分担に個人差が生じる(営業担当者から仕事を内勤担当者へ押し込まれる)ことなどから、業務範囲・品質が不均一となるといった問題を抱えていました。そこで、営業部門に内勤の司令塔を置いて外勤営業と区別し、営業部門全体の効率化を図ることで全社の問題を解消する方策を検討しました。ところがA社における営業は、外勤に比べて内勤の重要性が低く、即座に内勤営業の司令塔を置くことが難しい企業風土でした。そこで、一旦暫定的に内勤部隊(インセールス)のトップを育成し、そこからアカウント責任者を輩出させ、最終的に内勤の司令塔を配する組織の確立へと導きました。



【組織改革の要諦】

組織改革とは、まさに一定の戦略を実現するために「組織」という器に新たな命を吹き込む行為であり、単に会社に混乱を招くだけの「組織いじり」とは明確に一線を画します。そのような「組織いじり」ではなく、本当の意味での「組織づくり」をするためには、以下の4点が必要です。

(1) 組織改革の基本思想の明確化

組織改革を行うための屋台骨となる「設計思想」を確立させます。具体的には、以下のような点について認識を合わせていくことになります。

  • 何のための組織改革か(どのような機能戦略をとるか)
  • 組織をどのように変えていくか(組織の統合/分離、集権化/分権化、事業組織/機能組織、ライン部門/スタッフ部門 etc.
  • 組織改革のステップ論(一気呵成で進めるのか/組織風土を考慮し段階を経て変えていくのか)

(2) 職務分掌および業務プロセスの策定

各組織体の業務範囲・内容を明確に定めるとともに、それらのプロセスを業務フローとして克明に可視化します。特に業務フローは精緻に作成し、現行組織・プロセス(特に既得権益)に対する影響を詳らかにすることで、過去との訣別を強固なものとします。

(3) 要員計画の立案

上記の業務プロセスを実現するために必要となる工数(時間)およびスキルを定め、自社の人材ポートフォリオと突合するとともに、不足する人員については採用計画に反映させます。なお、必要とされるスキル水準に応じて、場合によっては業務プロセスの外部化(外部委託等)を検討することも重要です。

(4) 実行計画の策定

上記(1)から(3)を実現していくための計画や各種留意点/対応策を、「実行計画」としてまとめていきます。ご参考までに、過去プロジェクトにおける実行計画の目次を以下にご紹介します。



【最後に】

企業の置かれている環境や内包する課題が流動的である以上、組織は固定的ではなく一定の寿命を有します。その寿命を見極めつつ適切な「組織づくり」をしていくことで、「生き物」としての企業の新陳代謝が活性化されるとともに、従業員も人財として有効に機能するのです。




今回は、業務改革プロジェクトにおける組織・制度設計の考え方のうち、組織改革はどのような考えに基づいて進めていけばよいかについて解説しました。
次回は、各種制度設計の考え方についてご紹介していく予定です。


CDIソリューションズ ディレクター
永松 正大 (ながまつ まさおお)