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ナレッジ・コラム

デジタルトランスフォーメーション

2020/04/20

デジタルトランスフォーメーションの勘所 第1回:デジタル化とは?そのメリットとデメリット

企業が行う経済活動やビジネスモデルの構築、あるいは企業そのものにおける組織や制度の変革など、企業を取り巻く市場環境のデジタル化に対する取り組みとして押さえておくべき「デジタルトランスフォーメーション(DX)」について、全6回にわたりお伝えする。第1回目は、デジタル化とは一体何か、またそのメリット・デメリットについて説明する。



■デジタル化とはなんだ?

「デジタル化」と言われて思い浮かぶことはなんだろう?

文字盤が数字だけの時計すなわちデジタルウォッチ、手書き文書ではなくてパソコンでつくった電子ファイル文書、レコードではなくてCDと答える方々は、もはやだいぶ古い世代に区分されてしまう時代になった。いずれも80年代から2000年頃にかけて線形的・連続的に動作していたものや物理的な媒体だったものが、非連続なものになったり電子的な手段や媒体に置き換わって、利用体験が大きく変わったモノばかりだ。

1990年代後半から2000年を過ぎるタイミングで、さらにインターネットが飛躍的に普及し、2007年からはモバイルデバイスが普及したことによって、前述の3つはそれぞれ、スマートウォッチ、スマートフォン、ダウンロードミュージックといったものに発展し、多機能化したり、複合小型化したり、媒体の形すらなくなってデジタルなデータだけだったりする。

そんな“デジタル”をイメージさせるもので皆さんにとって一番身近なものは、恐らくスマートフォンではなかろうか。今やスマフォは、様々なビジネスアイテムや道具を取り込んで、なくてはならなくなっている生活やビジネスに必須のデバイスだ。

1にあるような、かつてデスクトップにあったものがどんどんパソコンのアプリケーションとなっていくことを表現した有名なムービーがあるのでリンクを張っておく。是非一度見てほしい。https://vimeo.com/107569286


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歳以上の方々は、あー、そうそう!と納得するものばかりが次々にパソコンに取り込まれてきたのだ。地図、電話、予定表、メモ帳、電卓などが代表的なものと言えるが、デジタル化によって、もともとは物理的にその場に存在していたものが、ソフトウェアやアプリケーションなってしまったわけだ。

■デジタル化の特徴とメリット/デメリット

このように、デジタル化によって存在が変わって扱いやすさや体験が大きく変わってしまう。その特徴を整理してみよう。図2にデジタル化の特徴を列挙する。


階段状に状態やレベルが遷移する、連続しておらず、飛び飛びに離散して存在するということは、連続的にアクセスしなければ特定の情報や機能を使えないということがなく、ランダムにアクセスすることが可能であるということだ。また、なんらかの状態が、あるときを境に全然違う状態になってしまう突然の変化が起こりうることも示唆している。

物理的な場所や時間的な制約を受けず、存在として場所を占有することや形状がないばかりか、移動する必要がないなどの距離的な条件も関係ない。時間的には過去に戻してみたり、未来に飛ばして予測やシミュレーションが可能である。しかも計算機のリソースが十分であれば、リアルタイムに何万通りものパターンのシミュレーションを行う事も可能である。

形状がなくやり直しが利きやすいということは、加工・編集が容易であるということだ。また、加工編集の中でもそっくりそのままコピーができると言うことは、テキストや電子ファイルなどのコンテンツのみならず、ビジネスモデルそのもののコピーもデジタル領域では容易であることを意味する。これは、後述するようにメリット/デメリットの判断が大きく分かれる特徴となる。

デジタルになると、ネットワークの中を流れていきやすくなる。すなわちネットワークで繋げやすくなるということだ。ネットワークで繋げていくということは、間に介在していた様々な物理的・組織的・業務的・システム的・文化的な境目を越えて、さまざまなモノゴトの境目がなくなるということだ。本質的には、境目が存在するところに課題や問題点が存在すると言って良い。デジタルで繋いで境目を無くすということは、これまで境目に存在していた様々な課題が、一気に解決できる可能性を秘めているということだ。

デジタルにしてしまうと、モノゴトの状態や様子がデータで把握できるようになってくる。これまで見えていなかった様々なモノゴトの状態や様子が「見える」ようになってくることで、なんとなく経験や勘で進めてきた仕事の進め方や暮らし方がデータ中心の仕事の進め方や暮らし方、すなわちオペレーショナルモデルに変化してしまうことを意味している。

デジタル化のメリットとしては、時間や物理的な距離や空間を飛び越えて直接目的にリーチできる可能性があることが、最大のメリットと言えるだろう。現実世界で起こっていることと切り離して、デジタル世界の中だけで様々なモデリングやデータ操作が可能だ。そして、それは瞬時に様々なところにリアルタイムで同報することが可能である。

デジタル化のデメリットとしては、コピーが可能であるため特徴がなく、平易均質性が濫造されてしまう恐れがあること、経験やセンスが軽視されてしまう恐れがあること、時間的物体的な価値が軽視されてしまう恐れがあることなどが考えられる。いずれにせよ、全てがデジタルで完結するわけではないので、フィジカルなものやヒューマンなモノゴトとのバランスで捉えていくことが重要だ。


■デジタル化(Digitize)とデジタル化(Digitalize

デジタル化は、なにも今に始まったキーワードではない。MITメディアラボの初代所長ニコラス・ネグロポンテは1995年のベストセラー『Being Digital』で、デジタル世界の変化変遷を「アトム(実体のあるもの)からビット(デジタル情報)へ」というキーワードで見事に予測しているが、遡ること1984年には、CD-ROMやタッチスクリーンの到来を予測していた。すなわちインターネットが隆盛を見せる前の段階でも、フィジカルなインタフェースや物理的な媒体がデータとして記録され、コンピュータで扱われるデータに収斂していくことを予言していたのだった。

その後、インターネットが普及する2000年頃以降は、どちらかというと物理的な媒体がデジタル化したり、コンテンツ生成や回路設計の手段がデジタル化したり、商取引の手段がインターネット化するなど、手段がデジタル化することが大きなムーブメントとなっていた。第1次デジタル化(Digitize)である。端的にいうならばIT化と表現してもよいかもしれない。

一方で、昨今言われているデジタル化は第2次デジタル化(Digitalize)であり、かつてのそれとは大きく異なる。現在のDigitalizeはビジネスの一部をデジタル化するのではなく、バリューチェーン全体、取引先も見据えたビジネスモデル全体をデジタル化していこうとする試みなのだ。マーケティングから製品やサービスの設計、製造やサービス開発、販売やデリバリ、アフターサービスに至るまで、すべてデジタルテクノロジーでそのまま再現できる環境「Digital Twin」を作れるようにしようという考え方だ。図3にその比較を示す。


その実現のためには、手段を選ばない。2007年以来10年間で大きくITのトレンドとなってきた第3のプラットフォーム(モバイル、クラウド、ソーシャル、アナリティクス)をはじめ、IoT/AI、ブロックチェーンなどテクノロジーをフルに駆使した新しいビジネスモデルを創り出すことを主眼としている。

このあたりを履き違えて、現在のデジタル化をペーパーレス化を中心に・・・などと言っていると、明らかに20年遅れているトレンドを追いかけていることになる。しかしながら、日本の地方をはじめとした中小企業のみならず、大企業においてもまだまだそのような意識でいることが多すぎるのを目の当たりにする。自分たちは特別だから、小さな町工場なので、大企業病だからなかなか進まなくって・・・と、たくさんの言い訳が出始める。

「それでもいいですよ。少しずつ変えましょう」とは言うものの、デジタルの世界はある日突然全く意識していなかった別の業界の事業者が、新たな商材やサービスをいとも簡単に作って自社のビジネスドメインを破壊してしまう恐れがあるのだ。それがデジタルの最も怖いところだ。





次回はそうならないように、どうやってデジタル化に対応すれば良いのか、そのアプローチとなる「デジタルトランスフォーメーション」について言及していきたい。


CDIソリューションズ 顧問
八子 知礼(やこ とものり)